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    ポリコチルス科の右前肢。北海道小平町産出、白亜紀後期、70.8×19.6cm(UMUT MV19965)

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    ポリコチルス科が産出した露頭の様子(提供:棚部一成東京大学名誉教授)

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    露頭の拡大画像。椎骨の断面が見える(提供:棚部一成東京大学名誉教授)

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B17
ポリコチルス科長頸竜類の右前肢
日本の中生代海生爬虫類の多様性

約2億5000万年前から6600万年前の中生代には、魚竜、長頸竜類、モササウルス類、海ワニ、海ガメなど多様な爬虫類が海に進出し、現在の鯨類や鰭脚類のように海の食物網における上位の捕食者の地位を占めていた。長頸竜類は三畳紀末から白亜紀末まで繁栄した分類群で、その中には頸椎が70以上あり、全身の半分以上の長さの首をもつ種もいた。ポリコチルス科は長頸竜類としては相対的に首が短く、白亜紀に栄えた分類群である。本標本は北海道小平町の白亜紀後期の約9500万年前の中部蝦夷層群から産出した。展示されている右前肢だけでなく、同じ個体に由来する椎骨、肋骨、肩帯の右半分、断片的な腰帯、次項に紹介する胃内容物も見つかっている。頸椎と頸肋骨が一か所で関節することやエラスモサウルス科に広くみられる頸椎側面の稜がない事など、主に頸椎の特徴からポリコチルス科と判断された。論文が出版された2000年には、東アジアで唯一のポリコチルス科化石であった。その後、北海道から数点のポリコチルス科が報告されており、福島県や香川県からもポリコチルス科の可能性のある化石が報告されている。

日本からはこのポリコチルス科の化石以外にも多様な海生爬虫類の化石が産出している。最古の魚竜の一つであるウタツサウルス。白亜紀後期の地層からみつかるオサガメに近縁なメソダーモケリス。南極やニュージーランドから近縁種が知られるモササウルス類のタニウハサウルスル・ミカサエンシス。三次元的に保存された頭骨から両眼視できることが明らかになったモササウルス類のフォスフォロサウルス・ポンペテレガンス。北太平洋最古のエラスモサウルス科長頸竜類であるフタバサウルスなどである。無脊椎動物の研究等から地層の詳細な年代が明らかになっていることや、東アジア地域において日本以外で海生爬虫類を多産する地域が少ない事などから、日本における中生代海生爬虫類の研究は、各分類群の古生物地理や生息時代のレンジを考える上で極めて重要な意義を持っている。 (久保 泰)

参考文献 References

Sato, T. & Storrs, G. W. (2000) An early polycotylid plesiosaur (Reptilia: Sauropterygia) from the Cretaceous of Hokkaido, Japan. Journal of Paleontology 74: 907–914.

Sato, T. et al. (2012) A review of the Upper Cretaceous marine reptiles from Japan. Cretaceous Research 37: 319–340.