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陸産貝類の絶滅危惧種と外来種
陸産貝類は絶滅危惧種が多いことで以前から注目されてきた。その要因は、陸産貝類は移動能力が乏しく、海や川を越えて分布を拡大することが困難である点にある。特に、日本のような島国では島ごとに分化が進みやすく、日本国内だけで約700種の陸貝が記載されている。
陸産貝類の絶滅危惧種の典型例は島のマイマイ類である。最も有名な例は小笠原諸島の陸貝であり、小笠原諸島固有属のカタマイマイ類は特に有名である。この属は島ごとに多数の種に分化しているが、全ての種がレッドデータブックに掲載されている。特に、絶滅危惧I類としてランクされている種が多いことから、深刻な状況が理解される。
小笠原諸島で陸貝が減少した理由は複数ある。まず、小さな島は面積が限られているため、古くからの開墾によって古くからあった植生が破壊されている場所が多い。次に、外来種の捕食者の存在が挙げられる。人為的に持ち込まれたニューギニアヤリガタリクウズムシやクマネズミが陸貝の稀少種を捕食し、深刻な影響を与えている。
陸産貝類は植物食であるため農業害虫となる可能性があり、生きた個体の海外からの移入は禁止されている。しかし、そのような制限にもかかわらず、偶然輸入産物に紛れるなどの要因によって持ち込まれた外来種が発見されることがある。例えば、最近ではイスパニアマイマイが千葉県浦安市で発見された。この種は幸い各地へ広まっていないが、根絶は容易ではない。イスパニアマイマイは2000年以降に発見された新しい外来種の事例である。(佐々木猛智)
参考文献 References
Chiba, S. (1989) Taxonomy and morphologic diversity of Mandarina (Pulmonata) in the Bonin islands. Transactions and Proceedings of the Palaeontological Society of Japan. New Series 155: 218–251.
上島 励・岡本 正豊・斉藤 洋一(2004) 「新たな移入種、イスパニアマイマイ」『ちりぼたん』35: 71–74。