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小惑星イトカワの3D模型
(1/2,000スケール)
イトカワは、小惑星探査機「はやぶさ」が探査したS型小惑星で、これまでに人類が打ち上げた探査機の探査対象の中で最小の天体である。2005年に、はやぶさ探査機はイトカワの高解像度画像や可視・近赤外の反射スペクトルデータなどを取得した。展示品は、探査で得られたデータのうち、特に可視画像を用いて作られた高精度の数値形状モデルを基に作製されたイトカワの3D模型(1/2,000スケール)。イトカワの大きさは535×294×209mしかなく、密度は1.9g/cm3と大変低いため、小さな岩石が集まって形成されている「ラブルパイル型」と呼ばれる内部構造を持つ小惑星と考えられている。イトカワにはラフテレーンと呼ばれる岩がごつごつした地域と、スムーズテレーンと呼ばれる滑らかなレゴリスで覆われている地域がある。驚くべきことに、表面重力は地球の1万分の1以下という極めて小さなものでありながら、表面の岩石が流動した形跡が見つかっている。
はやぶさ探査機はイトカワのミューゼスCリージョと呼ばれるスムーズテレーンに2回タッチダウンした。計画していたような理想的な形でサンプルが取得できたわけではなかったが、イトカワ表面から数千粒もの微粒子をサンプル容器に採取することができた。2010年、はやぶさ探査機はサンプルとともに地球へと帰還し、人類史上初めて小惑星からサンプルを取得した探査機となった。地上からの観測により、イトカワのようなS型と呼ばれる小惑星は、LLコンドライトと呼ばれる隕石の一種が熱変成を受けたものに類似していると考えられてきたが、これが予想通りであることがはやぶさ探査機によって確かめられた。探査機の観測とサンプル分析により、小惑星イトカワは、直径20km程度の天体が一旦粉々になった後で、その一部が再集積したものであり、その後地球に近い軌道へと移動したのだろうと考えられている。 (宮本英昭)