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    火星の衛星フォボスの数値形状モデル(SS00002)

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    火星の衛星フォボス(中央、黒っぽい天体)は、火星(背面)に極めて近い軌道に存在している

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B2
1/140,000サイズのフォボス(火星の衛星)模型

フォボスは火星に2つある衛星のひとつで、火星表面からおよそ6,000km離れた軌道上にある。これは太陽系で知られている衛星の中で最も惑星に近い軌道である。フォボスは地球の衛星である月よりもはるかに小さく、むしろ小惑星に近い形状(27.0×21.4×19.2km)である。展示品は14万分の1スケールのフォボスの模型で、過去の探査画像から作られた高精細の数値形状モデルに基づき作製されたものである。

この衛星の起源はよくわかっておらず、2つの説が存在する。反射スペクトルの特徴が太陽系の中でも最も始原的な性質を持つと考えられているD型小惑星に類似していることから、小惑星が火星によって捕獲されたというのが、ひとつの仮説である。しかしフォボスの軌道は、離心率が0.0015、軌道傾斜角が1°と極めて小さいため、軌道上で集積して形成されたとする仮説もある。

フォボスの起源や進化を知ることは、地球型惑星や小惑星の形成史や進化を知る上で極めて重要な情報をもたらす。フォボスは火星探査機によって予備的に探査されてはいるが、フォボス探査を主目的として行われた探査で成功した例は過去に無い。そのため高解像度撮像を含めた全球マッピングや重力計測など、フォボスの起源や進化を知る上でカギとなる観測が、いまだに行われていない。そこで東京大学を含む幾つかの機関の研究者らにより、フォボスサンプルリターン計画が提案されている。火星衛星探査(MMX)ミッションと呼ばれるもので、2020年代の打ち上げがJAXAで予定されている。 (宮本英昭)