B29
ユーラシアカワウソ全身骨格
カワウソは、イタチ科カワウソ亜科に属すグループで、イタチ類の中では高度に水棲に適応しているといえる。このうち、ユーラシアカワウソはヨーロッパから東アジアまで広く分布している。しかし、過去100年ほどの間に毛皮目的に過度に捕獲され、また河川や周辺環境の破壊とともに分布域の各地で姿を消している。近年絶滅したと考えられる日本のニホンカワウソも、このユーラシアカワウソの亜種もしくは近縁種である。日本では四国が最後の生息地だったと考えられ、高知県や愛媛県から比較的後期まで生息情報が得られていた。本種は体重10㎏前後のカワウソで、河川周辺から沿岸域で活動して、魚や甲殻類を捕食している。
この骨格は医学部の小金井良精博士によって収集・研究されたコレクションであり、長く東京大学医学部で学術利用され、総合研究博物館で収蔵されるに至っている。小金井博士は、ヒトとともに多種の動物を研究していたため、かつて入手可能であったカワウソを重要な比較動物学標本として収集したと考えられる。
骨格の収集地は明確ではないが、総合研究博物館ではカワウソの日本産集団を大陸産集団と比較する研究が進められてきたため、地理的変異を精査する際に大きな役割を担っている骨格標本である。 (遠藤秀紀・楠見 繭)
参考文献 References
遠藤秀紀(2002)『哺乳類の進化』東京大学出版会。