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    セキショクヤケイ(Gallus gallus)。雄、仮剥製、全長550mm、左側面、2008年収集

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    背側面

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B30
セキショクヤケイ仮剥製

セキショクヤケイ(赤色野鶏)はキジ科の野鳥で、中国南部、インドシナ半島、マレー半島からインドネシアの島嶼部に至るまで広く分布する。家禽ニワトリの野生原種であることが証明され、世界中のニワトリはこのセキショクヤケイをもとにして作出、改良された集団である。体重は通常、雄で1㎏以下、雌で600g以下。雄がこの剥製のように、オレンジ色と金属光沢のある緑色で大変美しいのに対し、雌は地味で褐色の斑紋が特徴的である。一年にわずが10個程度しか卵を産まず、厳格な縄張りをもつ。このように、原種の生物学的特性は、効率的な食糧生産用家禽としては不適切であり、人類が長い時間をかけて特質のまったく異なる鳥に改良を重ねたことが推察される。

この仮剥製は、総合研究博物館の調査隊がラオス北部を踏査した際に収集・製作した貴重な標本で、インドシナ北部に分布する原種集団の典型的な姿を伝えるものである。分布域の広い同種では、地域によって形や大きさ、羽色や生態が異なっていることが予想されるが、現在までに十分な比較調査結果は得られていない。総合研究博物館は総合的な家畜家禽の現地調査を繰り返し、同地域の家畜家禽について世界でもっとも豊富な学際的情報を得て研究を継続している。 (遠藤秀紀・楠見 繭)