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    メガラダピス(Megaladapis)。頭骨(レプリカ)、全長250mm、右側面

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    左側面

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    背側前方寄り左側面

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B35
メガラダピス頭骨レプリカ

メガラダピスは、およそ1000年前に絶滅したと考えられるサルの一種で、マダガスカル固有の系統である。マダガスカルは中生代以来、大陸から切り離され孤立した島で、今日に至るまで島独自の動植物相をつくっている。霊長類に関しては、マダガスカルには原猿と呼ばれるキツネザル類のみが分布する。有名なワオキツネザルやアイアイ、シファカなどがこの仲間に属し、すべてが同島固有の種として適応放散を遂げている。

このメガラダピスは極端に大型化したキツネザル類で、体長は150㎝、体重80㎏に達したと推測される。おそらく樹上に暮らし、木の葉や木の実を食べていたと思われる。天敵も競争相手も乏しいこの島は、自然界が作る“進化の実験室”として機能したことが明らかで、この巨大化したキツネザルの繁栄もその例といえるだろう。絶滅が極めて新しい時代であることから、同島に渡った人間によって滅ぼされた可能性も指摘される。

このレプリカは、発掘されたメガラダピスの頭蓋から型をとって作製されたものである。彫刻家の酒井道久氏と進化生物学研究所の吉田彰氏によって型取りと成型が進められ、2009年に当館に収蔵された。本種自体が情報の乏しい動物であり、骨・化石から良質のレプリカが作られることで、世界中にこの系統の子細な情報を伝えることができるようになる。島嶼生物の特異的な進化や適応、そして絶滅のプロセスなど、興味深い知見が今後このレプリカから得られることが期待される。  (遠藤秀紀・楠見 繭)

参考文献 References

遠藤秀紀(2002)『哺乳類の進化』東京大学出版会。