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    インドガビアル(Gavialis gangeticus)。液浸、全長350mm

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    背側面

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B36
インドガビアル液浸

液浸標本が見せる通り、口が伸長した特異な形態をもつワニである。インドやネパール、パキスタン、バングラデシュに分布しているが、環境破壊とともに極端に生息数を減らし、絶滅の危機に瀕している。現在、国内の動物園での飼育例は少なく、姿を見ることが難しくなっている。

特徴的な長い口吻部は、水中での顎の開閉時に水の抵抗を少なくする機能的適応だと解釈されている。この形状によって、魚類を捕食する際に、素早い捕殺行動を可能にしていると推測されてきた。他方で、体長5mに達する大型のワニであり、魚類以外の動物を捕食する姿もしばしば観察される。

本標本は、おもに1920年代から40年代にかけて研究活動を続けた東京大学医学部西 成甫博士によって収集されたものである。西博士は当時の比較解剖学の世界的権威であり、日本の解剖学・形態学を支えた人物である。日本の解剖学は動物学ではなく、医学によって発展を遂げた時代があるとされるのも、西の影響に依るところが大きい。西博士による貴重な標本群は、総合研究博物館に受け継がれ、本邦解剖学の夜明けを今に伝えるコレクション群となっている。

総合研究博物館は、ワニの咀嚼機構を機能形態学的に研究してきた実績があり、本標本は、収集後およそ80年を経る現在も、貴重な標本として学術の最前線で貢献している。 (遠藤秀紀・楠見 繭)