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    スターダスト試料の透過型電子顕微鏡用スライス標本(FC6,0,10,7,15)

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    ヴィルト第2彗星の核

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太陽系内での大規模な物質輸送
彗星塵に残された記録

NASAの彗星探査機「スターダスト」は、1999年に短周期彗星であるヴィルト第2彗星(81P/Wild 2)に向けて打ち上げられた。2004年にこの彗星の核やその周囲(コマと呼ばれる)の撮影および放出される微小な塵を採取し、2006年に地球へと帰還した。スターダストが持ち帰った粒子はNASAのジョンソン宇宙センターに保管され、公募により世界中の研究者に試料が配分されている。展示している標本は、透過型電子顕微鏡での観察用に薄くスライスされたスターダストの粒子である。

短周期彗星は太陽系外縁部のカイパーベルトで形成し、より始原的な物質(鉱物や有機物)を保存していると考えられており、初期太陽系の情報を保持している天体の一つであると考えられている。地球に落下してくる隕石の多くが太陽に近い領域から飛来するのに対し、カイパーベルトは太陽系の外縁であるため、原始太陽系星雲の縁辺部についての情報が得られるのではないかと期待されていた。

スターダストが持ち帰った試料の多くは、おおよそ30 μmほどの大きさしかない粒子であるが、その分析から驚くべき結果が多数報告された。まず粒子の化学組成について、地球で発見されている隕石のうち、CIコンドライトに近いことが判明した。CIコンドライトは最も太陽の組成に近い化学組成を持つ隕石である。さらに、コンドライト隕石に普遍的に含まれる、コンドルールという球粒も発見された。コンドルールはケイ酸塩鉱物で構成された大きさ約1mm以下の球状の物質であり、原始太陽系円盤内で前駆物質を溶融するような加熱過程とその後の急冷過程により形成したと考えられている。スターダストの粒子を構成する主要な鉱物は輝石やカンラン石であり、それらの組成幅は幅広いものであった。さらに、炭素質コンドライトに見られる、カルシウムやアルミニウムに富む超難揮発性の包有物(CAI)と同様の物質も存在していた。これらの物質は太陽近傍の高温領域でしか形成しえないため、初期太陽系での大規模な物質移動があった証拠であると考えられている。 (新原隆史)