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    ナガレサンゴ(Leptoria Phrygia)。東京都沖ノ鳥島(OT-54)

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    ホソエダミドリイシ(Acropora valida)。東京都沖ノ鳥島(OT-88)

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    マルキクメイシ(Montastraea curta)。東京都沖ノ鳥島(OT-79)

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沖ノ鳥島のサンゴ標本

沖ノ鳥島は北緯20度25分に位置する日本最南端の絶海の孤島である。東京からは1740km、硫黄島からは720km、沖大東島からは670kmも離れた場所にある。特別に船を派遣する以外にこの島を訪問する手段は無く、調査が困難であるため、どのような生物がこの島に生息しているか情報はほとんどなかった。

2012年、沖ノ鳥島におけるサンゴの種リストが発表された。一般にサンゴの種数は熱帯域ほど多様であるが、沖の鳥島で記録された種数は93種であり、この数値は八重山諸島の1/4、マリアナ諸島の1/2、九州の天草と同程度の種数であることが分かった。このように種多様性が低い理由は、(1) ほかの海域から孤立しているため幼生の供給が少ないこと、(2)島が小さいためサンゴの生息に適した環境の面積が限られていることの2点にあると考えられる。

沖ノ鳥島は、無人の小さな孤島であるが、この島の存在により40万km2もの広大な排他的経済水域(EEZ)が維持されている。国際法上の島として認められるためには満潮時にも水没しないことが条件であるが、沖ノ鳥島は侵食を受けて満潮時に小さな岩が2つ露出するだけの状態になっており、温暖化に伴う海面上昇によって将来の水没が危惧されている。そのため、サンゴの保全と増殖を図り、沖ノ鳥島を守るための事業が行われている。

沖ノ鳥島におけるサンゴの研究は本学理学系研究科の茅根 創らのグループによって行われており、その証拠標本は総合研究博物館地理部門に収蔵されている。沖ノ鳥島のサンゴ相を記録する標本群は通常では入手し難い貴重な資料である。 (佐々木猛智・茅根 創)

参考文献 References

Kayanne, H. et al. (2012) Low species diversity of hermatypic corals on an isolated reef, Okinotorishima, in the northwestern Pacific. Galaxea. Journal of Coral Reef Studies 14: 73–95.