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    山城(京都府)、巨椋池、昭和4年採集(TI00010573)

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    武蔵(東京都)、北豊島、昭和18年採集(TI00010574)

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    千葉県南房総市、平成27年採集(TI00010575)

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    東京都文京区、平成27年採集(TI00010576)

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植物の分布変遷と絶滅

植物は固着性の生物であり、通常はその分布域は変化しないと考えるのが一般的である。しかし、長い歴史の中で気候変動や地形の改変などにより、生育基盤が変化すると、植物もその分布域を変化させざるをえない。あるものはその生育地を拡大し、あるものは環境の変化に対応できず、絶滅したと考えられる。しかしながら近代以降、植物の分布の変遷にはさらに二つの要因が関与している。一つは人間活動に伴う変化と、もう一つは地球温暖化による変化である。人間活動による変動には、人間活動によりその個体数を減少させ分布域を縮小させているもの(絶滅危惧種)と、意図的・非意図的にその分布域を拡大させているもの(帰化植物)がある。また、地球温暖化の影響で、これまで南の地域にしか分布していなかったものが、分布域を北に広げている例も報告されている。 (池田 博)



(1)野生絶滅-ムジナモ

モウセンゴケ科の水生植物。葉は捕虫葉となり、水中のプランクトンを補食する。日本では1890年に牧野富太郎によって発見され、全体の姿から「貉藻」と名付けられた。関東と北陸、近畿の池に生育していたが、埋め立てや洪水、環境の変化等で1960年代に野生集団は絶滅した。現在、埼玉県宝蔵寺沼では、栽培され生き残った個体を使い増殖が図られている。


(2)都市部からの絶滅-アズマイチゲ

キンポウゲ科の多年草。雑木林の林縁などで体の割に大型の白い花を一輪咲かせる。他の植物に先駆けて早春に咲くことから、「スプリング・エフェメラル」、「春の妖精」と呼ばれる。かつては都市部でも普通に見られたが、現在では生育できる環境がなくなったり、盗掘されたりしたため、都市部で見かけることはほとんどない。


(3)地球温暖化による分布拡大-タシロラン

葉緑体を持たないラン科の腐生植物。1950年代までは南日本からの報告しかなかったが、地球温暖化の影響か、1960年代以降、関東地方からも採集されるようになり、特に1990年代以降は関東一円で採集されるようになった。現在(2015年)の北限は栃木県大平町付近、東限は茨城県鉾田市付近となっている。


(4)外来植物-コゴメイヌノフグリ

ヨーロッパ原産のオオバコ科の植物で、1995年に小石川植物園で発見された。春に道ばたや土手でコバルト色の花を咲かせるオオイヌノフグリの仲間であるが、白い花をつけ、今のところ東京都内の数カ所に帰化しているだけである。外来植物(帰化植物)は、在来の種と競合したり、自生する近縁の種と交雑を起こしたりして、本来の生態系を崩す要因となる。