東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo
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専門を問われたら、解剖学と答えることもあった。死んだ動物の形を観察するのが、私の基本姿勢だからだ。しかし、解剖学という日本語は、残念ながら、遺体を研究する科学を指すのではなく、医療系実学職業教育のカリキュラムのコマを指すために使われる場合が圧倒的に多い。それとはまったく逆に形態学的に真理探究の場を創ろうとする私は、自分の学問をあえて「遺体科学」と呼んでいる。遺体科学は、動物遺体研究の、もっとも新しく、もっとも深く、もっとも執着心に富んだ営みだ。自然誌学、比較解剖学、古生物学、画像解析学などを集合させ、総合と継承の科学哲学を旨とする。動物遺体の無制限無目的収集を重ね、遺体から真実を解き、遺体を未来に引き継いで、知に貢献する。成果は、運動機構のマクロ解剖解析、標本形状の三次元データ蓄積、形態変異論の定量的議論などに結実してきた。遺体を凝視し、遺体に触れ、五感を駆使して遺体に取り組む遺体科学者にとって、研究する自らを言葉に表現することは、必須の責任だ。その責任を果たしつつ、動物園、猟師、飼育者、作家、彫刻家といった遺体を取り巻く人々や社会とともに、遺体と人間の関係の未来を論じ、遺体研究を文化の基礎に位置づけていくことが、狙いの核心にある。
 
略歴
1991年東京大学農学部獣医学科卒業。1996年博士(獣医学)取得。1992年〜2005年国立科学博物館動物研究部研究官、2005年〜2008年京都大学霊長類研究所教授、2008年より東京大学総合研究博物館教授。
 

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