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東京大学総合研究博物館ニュース ウロボロスVolime12Number2

帝国議会議事堂模型およびレリーフについて

藤尾 直史 (本館助教/建築史学)


 1936年に竣工した帝国議会議事堂(現国会議事堂)は戦後の一時期まで国内で最も高い建物であったことが知られている。この点、当初から意図していたわけではないものの、前展示の原タイトル(「超高層アーカイヴプロジェクト」その後「超多層建築的アーカイヴプロジェクト」へと改称)と結果的に通ずるものともなっていた。
 帝国大学医科大学初代学長三宅秀のコレクションへはこのような議事堂の模型およびレリーフ(小箱)にあたるものが含まれている。前者については本体台座へ「昭和十二年三月十八日/貴族院議員永年在職表彰記念/貴族院議員有志」「服部時計店謹製」などと銘板が付され、添付写真台紙へ「正四位勲二等三宅秀君貴族院議員ノ任ニ在ルコト四十六年精励恪勤力ヲ憲政ノ済美ニ効セリ貴族院ハ君ガ積年ノ功労ヲ憶ヒ茲ニ院議ヲ以テ之ヲ表彰ス」などと貼紙がなされている。後者については本体へ「浩祐」「帝国議会議事堂竣功記念/大正七年六月着手/昭和十一年十一月竣功」などと刻まれているほか、松坂屋の登録商標と包布が添えられ、桐箱へ「浩祐」「帝国議会議事堂竣功記念」などと墨書や貼紙がなされている。
 ところで議事堂の竣工にあたっては天 皇陛下への献上品として、
一、銀製帝国議会議事堂模型
一、帝国議会議事堂建築の概要 1 冊 (桐箱に納む)
一、帝国議会議事堂平面図 8葉
一、帝国議会議事堂高さ及長さ比較図 1葉
一、帝国議会議事堂建築に使用せる材料及機械類産出地一覧図 1葉
一、帝国議会議事堂行幸記念御写真  7葉
同じく各宮家及王公家への献上品として
一、帝国議会議事堂竣功記念藤井浩祐作青銅製小筥 各1箇(特製)
一、帝国議会議事堂建築の概要 各1冊(桐箱に納む)
一、帝国議会議事堂竣功記念額画 各1部
以上のようなものがそれぞれ準備されたとされている。
 模型については「天皇陛下 に献上し奉る御品は慎重審議の結果、新議事堂六百分の一銀製模型と決定、これに沖縄県産琉球石の台を附し、硝子箱に納め更に檜箱に納めたり」「右の製作は株式会社服部時計店に特命謹製せしめたり」とされている。
 またレリーフについては「各宮家及王公家への献上品は記念品たる青銅製小筥を内側銀製プレート張仕上となせるものに決定」「株式会社松坂屋に於て謹製せしめ」あるいは「議事堂竣功記念品として、議事堂正面の外貌を蓋の表面に表はせる『青銅製小筥』縦六寸横三寸六分、高さ蓋とも一寸六分を作製、之を桐箱に納め、竣功式の招待者に贈呈したり」「右記念品は当局の依嘱に依り彫刻家帝国美術院会員藤井浩祐氏原型を作り、同氏指揮監督の下に株式会社松坂屋に於て製作せり」とされている。
 レリーフは同一目的のものだから内容的に合致が見られるのは当然といえば当然である。それに対して模型は本来性格が異なるものであるにも関わらず内容的に合致が見られる点が興味深い。

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図1.帝国議会議事堂模型
(UMUTKA0500030260)



図2. 帝国議会議事堂レリーフ
(UMUTKA0500030261)