学芸員専修コース
「収集と表現加藤正世・博物学コレクションを素材として」および共同企画展示「セミ博士の別室加藤正世・博物学コレクション」
池田 博(本館准教授/植物分類学)
矢後勝也(本館助教/昆虫自然史学・保全生学)
2015年11月9日より13日まで、「学芸員専修コース」が開催された。このコースは、博物館および博物館相当施設で働いている方を対象としたリカレント教育の場として
毎年実施されているものである。今年度は池田と矢後が担当し、テーマを「収集と表現 ?加藤正世・博物学コレクションを素材として」と題しておこなわれた。
加藤正世(1898 〜 1967)は、昆虫類特にセミ類の研究者で、約6万点の昆虫標本が当博物館に寄贈されている[矢後(2015)を参照]。しかし、加藤博士が採集したの
は昆虫だけではなく、植物、哺乳類、貝類、鉱物など多岐にわたっている。そこで今回は、あえて昆虫以外の収集品を使って展示計画を考えることによって、加藤正世の
研究の全体像を明らかにしようという試みで学芸員専修コースが実施された。ちょうど練馬区石神井公園ふるさと文化館で「?類博物館 ?昆虫黄金期を築いた天才・加藤
正世博士の世界」展が開催されている関係もあり、両方の展示を見ることによってさらに理解を深めることも企図された。
受講生は国内の博物館・博物館相当施設で働いている方および中国からの留学生の合計11名で、「博物館計画」や「博物館デザイン表現」などについての講義や、バ
ックヤード研修をおこなった後、具体的な企画制作作業をおこなった。さまざまな分野の学芸員・研究員の方が意見を出し合い、展示を作り上げる作業はかなり大変であっ
たが、最終日には小さいながらも一般の方にお見せできる展示ができたものと考えている(図1、2)。この展示は、共同企画展示「セミ博士の別室 ?加藤正世の博物学コ
レクション」と題して、2015年11月14日より11月30日まで、小石川植物園(東京大学大学院理学系研究科附属植物園)内にある総合研究博物館小石川分館で公開した(
図3?6)。メインタイトルの「セミ博士の別室」は、かなり時間をかけて議論を重ねた結果であるが、セミの研究者である加藤博士の、昆虫類にとどまらない興味の広がりを
うまく伝えるタイトルとなったのではないかと思う。この展示には、同時期に石神井ふるさと文化館で開催されていた「?類博物館」展との連携で見に来て下さった方もあり、
多くの方がお見えになったと聞いている。展示は11月30日で終了し、撤収作業をおこなった。
この「学芸員専修コース」、「共同企画展示」の受講生・展示制作者は、小煬h寛(制作リーダー)、石橋健太郎、内舩俊樹、金杉隆雄、木下佐知子、久保 泰、中村 玲、
深見和子、山本伸子、伊藤勇人、庄 海玲の諸氏である。講義・バックヤード研修等には、本館の松本文夫特任教授、関岡裕之特任准教授、佐々木猛智准教授、宮本英
昭准教授、鶴見英成助教、新原隆史特任助教の指導をいただいた。制作補助として、中坪啓人、阿部聡子、清水晶子、坂本真理子、赤司千恵の各氏に協力いただいた。
また、西野嘉章館長および本館ボランティアの方々には、制作最終日の内覧会で展示に関する批評をいただいた。ここに記してお礼申し上げる。
参考文献
矢後勝也(監) 2015. ?類博物館 ?昆虫黄金期を築いた天才・加藤正世博士の世界。158pp. 練馬区立石神井公園ふるさと文化館、東京。
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