東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo
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東京大学総合研究博物館ニュース ウロボロスVolime21Number2



研究紹介
ふじのくに地球環境史ミュージアムが 日本空間デザイン賞大賞他を受賞

洪 恒夫(本館特任教授/展示デザイン)

 ふじのくに地球環境史ミュージアムは、静岡県が日本で初めて環境史(=人間と自然の関係の歴史)をテーマに設立した県立博物館である。また、新築建築の施設が多い中、県立高校の廃校を改修し活用したことが、テーマと共に特徴的な施設である。
 施設自体は平成28年3月25日に開館したが、上記のようなオリジナリティの高い施設を目指す上で平成25年度に基本構想検討委員会が設置され、遠藤秀紀本館教授が博物館運営分野、そして私、洪恒夫が博物館展示分野の整備アドバイサーとして招かれ、検討に参加、これに続く26、27年度において製作段階のアドバイザーの任を引き続き果たした。
 予算も決して潤沢でなく、県立博物館では初めての試みである廃校利用などの制約も多い中、当館を魅力的なミュージアムにする上では様々な工夫と知恵が求められた。しかしながら幸いなことに、実践的にミュージアム研究を推進する本東京大学総合研究博物館における経験から得た知見を当ミュージアムの計画、設計、製作の多くの局面で役立てることができた。一部を紹介するなら、自身が取り組むミュージアムテクノロジー研究において体現したミュージアムを外に持ち出す試みの「モバイルミュージアム」、それらを学校教室にて展開した「スクールモバイルミュージアム」、また、収蔵や研究活動というバックヤード機能と展示・普及といったフロントヤード機能の中間領域を特徴付ける「ミドルヤード」、更には長野市戸隠地質化石博物館や宮崎県美郷町国際うなぎLABOで実践した「廃校利用の常設ミュージアム」などの経験を役立てることができたのである。
 さて、当ミュージアムは開館して1年ほどが経過し、すでに約7万人の方に来場いただいた。そして、県関係者、来館者の評判も上々である。加えて特筆すべきは、国内外の多くのデザイン賞受賞という外部評価を得ることができたことである。 具体的に挙げると、まずは日本空間デザイン賞2016の大賞受賞である。これは幅広い分野から応募された総点数785点の中の大賞に選ばれた。この賞は本館としては、2004年の「石の記憶‐ヒロシマ・ナガサキ」、2008年の「鳥のビオソフィア」、2013年の「学術文化総合ミュージアム‐インターメディアテク」に続く実に4度目の大賞受賞となる。同じく日本空間デザイン賞の企画研究賞、日本商空間デザイン賞銀賞・審査員特別賞、と国内で3つの受賞を成し遂げた。これらに加えて海外では、香港デザインセンター主催のDesign for Asia Awards、香港インテリアデザイン協会主催のAsia Pacific Interior Design Awards、イギリスのデザイン誌「FX Magazine」主催のFX International Interior Design Awardsの3つにおいて各々部門賞を受賞し、計6つの受賞を果たした。
 県立博物館である当ミュージアムの展示設計、施工は受託会社として株式会社丹青社が行ったが、展示監修を本館教員である私が担当するという、文字通り産官学連携による施設づくりの好例となったのではないかと思っている。
 上記以外にも本館との関わりは深い。当ミュージアム准教授である高山浩司氏は、前職は本館に特任助教として籍をおいていた研究者である。また、現在開催中の第一回特別展「静岡のチョウ 世界のチョウ」展では本館矢後勝也助教が学術監修、そして私が展示監修を担当している。
 今後も本館とは良いかたちでの博物館連携を行い、魅力的な活動を展開していけることを願っている。

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図1 第3室「ふじのくにの海」展示風景:教室再利用のイメージを出す上で学習机を効果的に用いたデザインを実施.
撮影:ナカサ&パートナーズ.


図2 第5室「ふじのくにの環境史」展示風景:美術館のインスタレーションのような表現で考える展示を展開.
撮影:ナカサ&パートナーズ.