スクール・モバイルミュージアム
月面探査――Back to the Moon
清水雄太(本学工学部3年生)
竹内暁人(本学工学部3年生)
柏崎麗子(本学工学部3年生)
佐藤 快(本学工学部3年生)
宮本英昭(本館教授/固体惑星科学)
新原隆史(本館特任助教/惑星物質科学)
洪 鵬(本学工学系研究科特任研究員/惑星大気科学)
逸見良道(本学工学系研究科学術支援専門職員/惑星地質学)
1967年に初めて人類が月面に降り立ってからおよそ50年。 近年の技術革新で、低コストかつ信頼性の高い機器が作られるようになり、かつて政府主導で行われていた月面探査に民間企業が参入する時代となった。日本では株式会社ispaceの月面探査チームHAKUTOが月の探査ロボットを開発し、月面探査の実現に向けて取り組んでいる。
月面探査といえば高尚で、先端科学の結晶と思うかもしれない。それは事実だ。しかし同時に、実際準備する時に必要とされるアイディアは、意外と地味で身近である。例えば月面で走らせる探査ロボットを考案しようと思えば、まずは実際に月面に存在する岩を持ってきて、砕いて細かくして模擬土壌を作り、どこかの電気屋で買ってきたラジコンを走らせる。いわばこの「大規模な自由研究」を以って、初めて月のレゴリスが細かすぎて、通常のタイヤでは全く走れないことや、レゴリスが機器の隙間に入って故障してしまう等といった先端科学の知見が得られるのだ。
今回の展覧会『月面探査』の目的は、そういった宇宙の先端工学の高尚だが身近である部分を体感してもらうことである(図1)。慶應義塾大学の石上玄也准教授、JAXA大槻真嗣助教、株式会社ispaceのご協力を賜り、最先端の月面探査ロボットの紹介や最新の車輪が展示してある。これらは一級品のサイエンスであり、先端工学の高尚な部分である。
一方、会場には探査ロボットを試験する際に用いる月の模擬土壌が展示してあるが、これは実は月のレゴリスと構成物質が似た本邦産玄武岩(三宅島など)を、この展示の企画者が「ひたすらに」砕いて用意した砂である。これは、粒径、粒子形状が実際の月土壌に近い土壌(シミュラント)である。また、会場奥には1トンほどのシミュラントが敷き詰められているが(安全のため粒径を月面よりは大きくしている)、このシミュラントの上には、株式会社アフレルのご協力で実現した展示のためにレゴで作ったラジコンと、様々なパーツを加えてシミュラント上の走行用に改良されたラジコンが配置されている(図2)。本展覧会の参加者はそのラジコンをシミュラントの上で実際に走らせ、想像を超える月面での走行の難しさを体感する。「砂の上でラジコンを走らせる」という一見身近な実験モデルで、月面探査の最先端を体感することができるのだ。
この展覧会は東京大学工学部システム創成学科知能社会システムコースに属する3年生の学生14名(引頭信太郎、柏崎麗子、小林俊介、榊 拓馬、佐藤 快、清水雄太、杉浦昇太、高橋直人、田上 拓、竹内暁人、中島陽斗、長沼康太、リ イミン、山田涼太)を中心として企画され、宮本英昭教授およびその研究室のメンバー(宮本英昭、パーソンズ・リード、新原隆史、洪 鵬、逸見良道、菊地 紘、茂木勝郎、新階瑠美、小島 平、岩本 武、西尾勇紀、船木康平、小林真輝人)が監修・協力し、文京区教育センターの共催で実現した。展示品に関して、株式会社ispace、株式会社アフレル、慶應大学石上玄也准教授、JAXA大槻真嗣助教授のご協力をいただいた。研究者や学生による「ギャラリートーク」を実施し、様々な年齢層の方に来ていただいており、月面探査を身近に感じてもらえれば幸いである。
会 場:東京都文京区湯島4-7-10 文京区教育センター2階 大学連携事業室
会 期:2017年11月25日(土)〜2018年5月12日(土)
休館日:日曜・祝日
時 間:9:00〜17:00(入場は16:30まで)
主 催:東京大学総合研究博物館
共 催:文京区教育センター
入館料:無料
TEL : 03-5800-2591
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