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諏訪 元
す わ げん
館長が日本学士院エジンバラ公賞を受賞
本誌編集部
日本学士院は、2018年3月12日開催の第1117回総会において、本館館長・諏訪 元教授への日本学士院エジンバラ公賞の授賞を決定し、同年6月25日に天皇皇后両陛下ご臨席の下、第108回授賞式が日本学士院会館にて執り行われた。
日本学士院エジンバラ公賞は、自然保護、種の保全の基礎となる優れた学術研究に対して隔年に1件授与される日本学士院の賞で、エジンバラ公フィリップ王配(イギリス女王エリザベス2世の王配)が日本学士院の名誉会員となったことにちなんで1987年に創設された。日本の学術賞としては最も権威ある賞の一つである。
受賞された諏訪館長の研究題目は「人類の起源と進化?ラミダス猿人から現生人類へ」で、その授賞理由の概要は次の通りである。1980年代から東アフリカ、とりわけエチオピアにおいて初期人類化石の発見と進化形態学的研究に従事し、中新世後期(1,160万から530万年前)から更新世(260万から1万2千年前)まで幅広い時代の人類とその進化・適応について明らかにしてきた(図1)。特に440万年前のラミダス猿人(アルディピテクス・ラミダス)、すなわち類人猿とアウストラロピテクスの間に位置する移行型の人類を1992年に発見、1994年に命名して、直立2足歩行の出現と雄犬歯の縮小(図2)が人類の系統において早期に起きた可能性が高いことを示した業績は特筆に価する。また、既存唯一の800万年前のアフリカの大型類人猿化石であるチョローラピテクスを発見、発表し、チンパンジーとヒトの祖先との分岐がおよそ500万年前程度と考えられてきたのに対し、アフリカ類人猿とヒトの祖先との分岐はより深いとの仮説を提唱してきた。さらに200万年前ごろ以後のホモ属は、集団間変異が大きい単一の種系統として、175万年前ごろまでにホモ・エレクトスへと進化し、以後旧人段階、新人段階の人類へと進化した様相などについても解明してきた。これらの業績が認められ、今回の受賞に至った。
この栄誉を記念して、2018年9月21日に東京大学理学部2号館4階大講堂で公開講演会も開催された(図3)。「ラミダスの発見、その前、その後」の演題により、受賞対象となった長年にわたるエチオピアの古人類研究について、ラミダス猿人の化石の発見経緯を振り返りながらお話しいただいた。また、同日夜には小石川にてお祝いの会も催され、人類学の研究者をはじめ多くの方々から祝辞が送られた。
今回の受賞は、館長の真摯な研究姿勢と独創性・先端性を生かした高度な学術研究の賜物であり、学問のあり方を自らお示しいただいた。東京大学総合研究博物館に身を置く私たちとしては、なお一層の努力が必要であることを認識する一方で、館長の受賞を大変誇りに思うとともに、心からお祝い申し上げる次第である。
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図1 エチオピアの調査地にて(1990年11月;T. White提供).
図2 ラミダス猿人の雄の歯列.
図3 受賞記念講演会の様子(2018年9月21日).