2019―2020年度総合研究博物館の耐震改修工事
西秋良宏(本館館長/先史考古学)
総合研究博物館の本郷本館は2019年8月から長期にわたって休館しています。展覧会や講演会などイベントを楽しみにしておられるみなさんには申し訳ないことですが、理由は耐震改修工事です。しかしながら、長く続いた工事やそれにともなう引越作業も2020年12月に一段落となりました。これを機に、増築を繰り返してきた総合研究博物館の建物の歴史、今回、工事の対象となったのはどの部分なのかについて整理しておきます。
総合研究博物館(以下、博物館)は1996年に開館しましたが、その前身は1966年発足の総合研究資料館(以下、資料館)にあります。発足当時の資料館は、1965年竣工の建物をお隣の東洋文化研究所と共有していました。下層部が博物館、上層部が東洋文化研究所です(図1)。その直後の1967年から1968年にかけて現在の館長室や事務室がある一角が地上4階、地下1階の建物として新築されました(図2)。東洋文化研究所側の建物の下層(4階以下)の一部も資料館が利用していましたので、資料館は二つの建物にまたがっていたことになります。当時の展示室は、現在の東洋文化研究所建物の1階ロビーにありました(図3)。私が文学部考古学の学生の頃は、このロビーから入って渡り廊下をとおって資料館の考古部門の部屋に通っていました。当時の資料館要覧には、この建物が「新館」と記載されていることに時代を感じます。
資料館が東洋文化研究所と別棟となったのは1984年以降です。現在の正面玄関がある一角を中心に展示室などが新設され、あわせて、既にあった建物の上層に5、6階が増築されました。同時に、現在の東洋文化研究所建物下層にあった各研究室が新館に移設されましたので、1階から4階まで両建物をつないでいた渡り廊下も以後、使われることがなくなりました。そして、現在の博物館の形が整ったのが1995年の増築時です。展示室奥に扇形の7階建てスペースが増築されました。これをもとに、公開発信、分野横断型研究機能がいっそう充実され、1996年の総合研究博物館への組織替えが達成されることとなりました。
要するに1965年竣工の建物に、1967〜1968年、1984年、1995年と数度にわたる増築が加わり、現在の博物館の形が整ったことになります。1965年竣工建物(現東洋文化研究所)の耐震改修工事は既に完了していましたので、今回、1967年増築分の工事がなされたというわけです。
こうした歴史を振り返ると、改めて幾度もの増築・改修を繰り返して博物館が成長してきたことがわかります。全国初の学内共同利用施設として資料館が発足して以降、その有用性、価値、将来性が認められたからこそ、増築が可能になったのだと考えます。この間の諸先生方の努力には頭がさがるところです。今回の工事部分は研究室が集中する部分でしたから、今後、正面玄関から来館されるみなさんは何がどう変わったのかお気づきにならないかも知れません。しかし、安心して来館いただける建物になったとのだとご理解ください。コロナ禍という思わぬ災難が続いてはいますが、それをも奇貨として、新たな施設のもと、総合研究博物館がいっそうの発展をはかっていく所存です。
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