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シロサイ骨格
宝箱に生きる希少種
自然界のサイ類はどの種も絶滅の危機に立たされている。動物園での飼育と繁殖は、このような種においては来園者に見てもらうだけでなく、生息域の外で人工的に繁殖を進めるという意義をもっている。しかし、年齢とともに必ず一定数のサイが死期を迎える。死体はこの珍しいグループにおける基礎的な情報をもたらすことになる。
総合研究博物館には、動物園に由来するアフリカとアジアの複数種のサイが収蔵されてきた。展示されるのは、アフリカに分布するシロサイ(Ceratotherium simum)の2個体である。鹿児島市平川動物公園に暮らしたチョウスケと神戸市王子動物園に生きたナナコである。いずれも死後、死因の究明が進んだ後、死体が総合研究博物館に寄贈された。両個体とも解剖の後、身体のとても大きな成獣個体であったため、一度土中に埋設して白骨化を進めた。さらにその後、ナナコの骨は念入りに熱湯による晒しを施されて標本化されている。
シロサイだけでなく、すべてのサイの種類に関して、種や個体の希少さゆえに、個体レベルでの解剖学・生理学の研究はほとんど進んでいない。既存知見の重要な部分は100年も前の研究に依存するほどである。しかし、総合研究博物館は動物園から緊密な協力を得て、様々な困難を克服して、死体からのデータ採集を実現してきた。たとえば、下部消化管の形態、皮下構造、耳管の形状や大きさ、骨格の断面構造などに関心をもって研究を進め、いくつかの世界的に貴重な報告をもたらしている。動物園動物は大切に飼われ、市民に愛される。それと同時に、死後も人類の知に貢献し、UMUTオープンラボのような空間で、第二の生涯を歩むことができるのである。 (遠藤秀紀・楠見 繭)